Message
最期に完成した弦楽四重奏となった第16番作品135の終楽章印刷ページの最初に、ベートーヴェンは不思議なコメントを記している。冒頭グラーヴェの三音に“Muss es sein?(こうでなければならぬのか?)”、その先の三音繰り返しに“Es muss sein!(こうでなければならぬ!)”と書いたのだ。
修練期の終わりから最晩年まで、総計16曲の弦楽四重奏曲を書き続けた楽聖が、最期の最期に呟いた謎めいた言葉は、250年近くも人々を困惑させてきた。そもそも何が問題で、何がそうでなければならないのか?
学生時代から仲間を集め、このジャンルに挑戦していたチェリスト山崎伸子は、ソリストとしての時間を割き、多くの音楽家らとベートーヴェンの弦楽四重奏曲を奏で、学び、議論し、教え、深めてきた。長老の域に達した今でも、学ぶことはまだ多いと意欲に燃える山崎が、音楽家人生の集大成としてベートーヴェン弦楽四重奏全曲に取り組もうとする。
そこに至る前に、ヴァイオリンは都響を率いる水谷晃、ヴィオラはN響の最前列に座る村上淳一郎という若き実力者らと、この作曲家が弦楽四重奏着手前に終止符を打った弦楽三重奏を丸2年かけて全曲演奏し、若き楽聖の思考と作曲技法の発展をじっくり探求。そしていよいよ、弦楽四重奏の経験も深い對馬哲男を第2ヴァイオリンに迎え、満を持して16曲+αの楽譜に対する。「こうでなければならぬのか?」の問いに真っ正面から答える、6年の長い音楽が始まる。
修練期の終わりから最晩年まで、総計16曲の弦楽四重奏曲を書き続けた楽聖が、最期の最期に呟いた謎めいた言葉は、250年近くも人々を困惑させてきた。そもそも何が問題で、何がそうでなければならないのか?
学生時代から仲間を集め、このジャンルに挑戦していたチェリスト山崎伸子は、ソリストとしての時間を割き、多くの音楽家らとベートーヴェンの弦楽四重奏曲を奏で、学び、議論し、教え、深めてきた。長老の域に達した今でも、学ぶことはまだ多いと意欲に燃える山崎が、音楽家人生の集大成としてベートーヴェン弦楽四重奏全曲に取り組もうとする。
そこに至る前に、ヴァイオリンは都響を率いる水谷晃、ヴィオラはN響の最前列に座る村上淳一郎という若き実力者らと、この作曲家が弦楽四重奏着手前に終止符を打った弦楽三重奏を丸2年かけて全曲演奏し、若き楽聖の思考と作曲技法の発展をじっくり探求。そしていよいよ、弦楽四重奏の経験も深い對馬哲男を第2ヴァイオリンに迎え、満を持して16曲+αの楽譜に対する。「こうでなければならぬのか?」の問いに真っ正面から答える、6年の長い音楽が始まる。
(音楽ジャーナリスト 渡辺 和)


